その他
あはき療養費改定による今後の業界変遷予想
令和8年7月に施行された「あはき療養費改定」は、訪問鍼灸マッサージ業界のビジネスモデルに大きな転換を迫る内容となりました。
基本料金のベースアップが行われた一方で、「頻回の訪問」や「施設での大人数囲い込み」に対する強力な適正化ルールが導入されています。
今回の改定により、今後の業界はどのように変わっていくでしょうか?
改定内容を踏まえ、今後予測できる事項を、4つの視点で解説します。
改定内容を踏まえ、今後予測できる事項を、4つの視点で解説します。
もくじ
1. 「頻回訪問モデル」から「適正回数・高付加価値モデル」への転換
今回の改定で現場に大きなインパクトを与えるものの一つが、「同一月内で16回目以降の施術料・訪問施術料などが50%算定になる」という新ルールです。
これまで週4回以上(月16回以上)の頻回訪問を中心に売上を構成していた事業所は、そのままでは大幅な減収となります。そのため、その訪問分を別患者に回すことになるでしょう。
患者一人に対し週2〜3回という訪問の中で、いかにADL向上や痛みの緩和といった成果を出すかという「施術の質」もよりシビアに問われるようになります。
患者一人に対し週2〜3回という訪問の中で、いかにADL向上や痛みの緩和といった成果を出すかという「施術の質」もよりシビアに問われるようになります。
2. 大型施設依存からの脱却と「個宅(在宅)回帰」
同一建物への訪問施術料が細分化され、新たに「10〜19人」「20人以上」の区分が追加されることにより、一度に大人数を施術する際の単価が大きく引き下げられました。さらに、特定の施設への訪問割合が90%以上を占める事業所に対する「集中率減算(80%算定)」も導入されています。
加えて、事業所と施設の法人が同じであったり、専属契約を結んでいたり等「特別な関係」にあり、実態として患者側が自由に施術所を選択できない場合は、療養費そのものが不支給となります。
加えて、事業所と施設の法人が同じであったり、専属契約を結んでいたり等「特別な関係」にあり、実態として患者側が自由に施術所を選択できない場合は、療養費そのものが不支給となります。
これにより、大型の老人ホーム等に依存し、効率よく人数をこなすビジネスモデルは利益を出しにくくなります。
今後は原点に立ち返り、地域のケアマネージャー等との連携を深め、在宅の患者を地道に開拓していく営業力が重要になります。
今後は原点に立ち返り、地域のケアマネージャー等との連携を深め、在宅の患者を地道に開拓していく営業力が重要になります。
3. 自費サービスとのハイブリッド化
マッサージの1局所、はり・きゅうの基本料金が引き上げられるなど、1回あたりの単価はアップしました。しかし前述の回数制限等により「保険のみ」での売上拡大には限界が見えやすくなっています。
これを打開するため、月15回までの保険適用と並行して、保険適用外すなわち自費の「リハビリ特化メニュー」「機能訓練」などを提案し、患者1人あたりの単価を高める「保険+自費のハイブリッド経営」にシフトする事業所が増加すると予測されます。
先に述べた項目とも重複しますが、患者負担が大きくなる自費メニューにおいては、「施術・サービスの質」がよりシビアに問われるようになるでしょう。
先に述べた項目とも重複しますが、患者負担が大きくなる自費メニューにおいては、「施術・サービスの質」がよりシビアに問われるようになるでしょう。
4. コンプライアンスとDX対応力による「二極化・業界再編」
新たに「明細書発行加算(1回10円)」が創設され、明細書を無償交付することにより加算が発生するなど、コンプライアンスに重きが置かれています。同様に、患者紹介や斡旋による金品の提供や、不適切な関係に対する規制も厳格化されました。
ルールの厳格化とともに療養費支給申請書の作成も複雑になり、自力で対応するのも困難になりつつあります。
また、今回の改定とは直接関係はありませんが、オンライン資格確認の導入も継続して推進され、さらに数年後は請求そのものもオンライン化が検討されています。
このように、複雑化する算定ルールや、システム導入に迅速に対応できるコンプライアンス基盤を持った事業所が生き残る一方で、対応が遅れる事業所は経営が悪化し倒産、或いはM&Aが頻発、という流れで、業界再編が一気に進む可能性があります。
5.まとめ
5.まとめ
令和8年7月改定は、これまでの「同一家屋による回数・人数稼ぎ」を明確に抑制し、「地域密着の在宅対応」を正当に評価する方向へと舵を切りました。
前回の令和6年の改定から「近距離・個人宅」が有利になりましたが、今回はさらに拍車がかかった格好ですね。
方針としてはケアマネ営業を行うことになりますが、多くの事業所が同じ手段をとればケアマネ営業が大幅に増えるでしょう。そこでどう差別化を図るかも鍵になりそうです。
あくまで予想ではありますが、ご参考になれば幸いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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前回の令和6年の改定から「近距離・個人宅」が有利になりましたが、今回はさらに拍車がかかった格好ですね。
方針としてはケアマネ営業を行うことになりますが、多くの事業所が同じ手段をとればケアマネ営業が大幅に増えるでしょう。そこでどう差別化を図るかも鍵になりそうです。
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●足森大起(あしもり だいき)
一橋大学卒業後、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得。訪問マッサージの現場にて、個人宅や施設での施術経験を積み、ケアマネ営業や請求業務にも対応。
現在は、制度や現場に精通したサポート担当として、年間100事業所以上の新規開業や受領委任制度の相談に携わるほか、業務支援サービスのユーザーサポート・品質管理にも従事。
保険請求セミナーの講師として制度理解の普及にも取り組んでいる。
趣味は居合い抜刀術で、年に数回滝で修業も積んでいる。
